多飲多尿について

11月に入り、そろそろ冬本番の季節ですね(年々秋らしい季節が短くなっているような気がします)…。

気温が下がると犬ちゃん猫ちゃんが水を飲む量は減る傾向にあります。ただし、「あれ寒くなったけど、うちの子なんか最近よく水を飲むな」という症状にご注意ください。

基本的に水の飲むことは健康維持のため非常に大切な事なのですが、同時に「おしっこの量も増えてるかも…」「体重が減ってきたかも…」という場合は、病気のサインかもしれません。

「水をよく飲む、おしっこの量が増えた」そのような症状を“多飲多尿”と言います。環境要因(気温など)や食事内容(ドライかウェットフードか)によっても変動しますが、一般的に1日の飲水量が犬ちゃんでは90~100ml/kg、猫ちゃんでは50ml/kg以上、1日の尿量が犬ちゃん猫ちゃんともに50ml/kg以上である場合、“多飲多尿”と定義されています。

 

【多飲多尿を起こす疾患】

  • 腎不全

猫ちゃんで非常に良く認められる疾患ですが、高齢の犬ちゃんでも同じく認められます。

健康診断で早期発見が出来る代表的な疾患です。

  • 甲状腺機能亢進症

高齢の猫ちゃんに、腎不全に次いで多い病気です。多飲多尿だけでなく、よく食べるのに痩せてきた、少し怒りっぽくなったなどの症状も伴います。

  • 肝臓疾患

肝臓は症状が出た時には既にかなり病状が進行していることが多い「沈黙の臓器」といわれています。健康診断などでの早期発見が治療の鍵になります。

  • 子宮蓄膿症

未避妊の犬ちゃんでは10~20%が罹患すると言われています。多くの症例で緊急手術が必要な命に関わる疾患です。避妊していない高齢の犬ちゃん猫ちゃんが急にグッタリ、水ばっかり飲む、陰部からオリモノが出ているなどの症状は絶対に様子見せず、すぐに動物病院へお願いいます。

  • 糖尿病

犬ちゃん猫ちゃんともに多い内分泌疾患です。特に肥満傾向の子に多く見られ、急激な体重減少がある場合は要注意です。

  • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

中高齢の犬ちゃんに多く認められる疾患です。腹囲膨満、多食、パンティング、脱毛や面皰などの皮膚疾患などを併発する事もあります。

  • 副腎皮質機能低下症(アジソン病)

全ての年齢の犬ちゃんで報告があります。上記の疾患ほど多くない病気ですが、アジソンクリーゼと言って、急激な体調不良(虚脱、循環不全を伴うショック状態)を起こすことがあり命に関わる疾患です。

  • 高Ca血症

上皮小体機能亢進症や腫瘍随伴性により起こります。すぐに症状が出ることは少ないですが、痙攣や振戦(ピクピク動く痙攣様の症状)や虚脱(力が抜けて立てない)などの症状に注意が必要です。

  • 尿崩症

犬猫ともに稀な疾患です。いつでも水を飲める環境にしていただく事で命に関わる事は少ないですが、気になられた方はご相談ください。

  • 高アルドステロン症

猫ちゃんでは稀、犬ちゃんでは更に稀な疾患ではありますが、筋力低下、頸部屈曲(うなだれた様な姿勢)、腎不全などを引き起こす怖い病気です。

  • 心因性、環境要因

ストレスや暑さが原因で多飲多尿を引き起こします。①~⑩の疾患を除外して、これであれば初めて安心して経過を見ることできます。

多飲多尿のみの症状であれば、まだ病気の初期である場合が多いですが、病気があるにも関わらず食欲があるからと放置していれば、手遅れになってしまう事もございます。「もしかしたらウチの子、多飲多尿かも…」と思われた場合は、ご相談だけでも結構ですので、ご遠慮なくご連絡くださいね。